撮影とは「最高のエンターテインメント」

写真を撮って気づいたこと

正午過ぎた横須賀線は、意外なほど空いていて、窓から日差しが差し込む。

カドの席に座りながら、ここ最近の仕事に対する「閉塞感」の原因を探ろうとしていた。

「いい写真ってどんなものだろう」

考えれば、考えるほど出ない答えもある。

そんな折、僕は由比ヶ浜で撮影する機会に恵まれ、いままさに向かう道中であった。

「改札出たカフェにおるよ」

同行するオリタマさんのメッセージが入る。

オリタマさんは、recs(レックス)というサングラスの写真を一緒に撮っている関西出身の女性だ。

撮影は年2回くらいのペースであり、ぼくの中では

「あっ、夏だ。レックスだ」という1つのイベントになりつつある。

そしてこの日は、由比ヶ浜にいる一般の人たちにサングラスをかけてもらい、写真を撮る予定をだった。

「あついね」

立ち止まっても、ジワジワ汗が吹き出てくる。

いそぎ足で浜辺に向かうと、夏休みのせいだろう。

ひと、ひと、ひと。

ニュースで若者の海離れが激しいなんて言ってたけど、ここに関してはいっさい当てはまっていない。

まるで渋谷のクラブだ。

時間は15:00。

テキパキとサングラスの準備をし、浜辺を歩く。

声かけ撮影(ストリートスナップみたいなもの)にはコツがあって、
「この人いいな」と思ったら3秒以内に声かけをする。

時間をかけると
「断られたらどうしよう」とかネガティブなイメージばかり浮かんでしまうからだ。

幸い、由比ヶ浜は自撮り棒でキャッキャッと写真を撮ってる人が多かった。

「あの子たちエエね」

目線の先は、2人組の女性だ。iPhoneで海の写真を撮っている。

こんなときオリタマさんのセンサーは気鋭のキャッチのごとく目が光っている。
(今回はイケメンだけじゃなく、女性にも)

早速、2人のもとへ向かい、

「こんにちは。サングラス似合いそうな子に、声かけたんですけど」

ぼくたちの事情を説明すると「いいですよ」と了承してくれた。

女の子たちはレックスのサングラスを見るや否や、
パァーっと空気がはじけたように目が輝きだした。

「どれにする?この丸いのもカワイイね」

なかなか決めきれない2人に、
オリタマさんがアドバイスをする。

「茶色が似合うよ」とか
「四角いフレームはどう?」とか。

それに対して、女の子たちは
「キャッハハ」と笑いあっている。

いい空気感だ。

そのあいだに、僕はカメラの準備をする。

この日はソニーのカメラ。

「ボディが小さくて、撮りごたえがない」なんて話も聞くけど

こんな風にやわらかい雰囲気で撮るには、威圧感がなくていい。

シャッターを空に向けて押し、感触をたしかめる。

背景からひとはいらなかったので、海抜けと空抜けで撮影する。

みんなのテンションが下がらないように、
どんなに長くても撮影は3分と決めていた。

撮影がおわり、お礼をいうと、
また笑顔で海の写真を撮り始めていた。

「いい感じでしたね」

「そやね」

2人でしばらく歩くと、スケートボードを持った
2人組が浜辺に座っていた。

じつはこの2人は
同じ電車から降りるのを見ていて、
「いい雰囲気だな」と思っていた。

さっそく、声をかけると2人とも快諾してくれた。

たまに江ノ島のほうに遊びにくるらしい。

使い古されたボードや
ダメージデニム。細いチェーンのネックレス。

随所に感じられるスケーター感にぼくは心がおどった。

2人に岩壁に移動してもらい数カット撮影する。

「このサングラス欲しいな。いくらですか?」

これまでの撮影でも何度かあったが、

リアルなライブ感で物が
欲しくなるっていう現象は分かる気がする。

「いま、欲しい熱がある」

彼らと話していると、それが伝わってきた。

レックスのデザイナーである
ゴッチさんのクリエイティビティーはすごいと改めて感じる。

そのまま、3組ほど写真を撮らせてもらい、
いよいよ日が沈んで来た。

「つぎで最後ですね」

遠くに見える江ノ島の側を太陽が沈んでいく。

ドゥン、ドゥン。

どこからともなく、クラブのような音楽が聞こえてきた。

どうやら海の家にバンドやDJが来ているらしく、
浜辺に座っていた人たちが集まってきた。

するとぼくらの横に3人組の女性がいる。

どうやらライブが目的らしい。

一瞬、声かけを躊躇した。が目があったので聞いてみる。

「どうしようか、どうしよっか」

3人とも笑いながら、話し合っていた。

夕焼けとマッチして、すごくいい雰囲気の女性たちだ。

「じゃあ、3人で撮ろう。夏の思い出に」

そのまま浜辺に行き、サングラスを選んでもらう。

選んだものを見るとすごくセンスがいいなと思った。

この時間になると、逆光がかなりキツくなる。

ぼくは持ってきたレフ板をオリタマさんに任せて、撮影を始めた。

夕焼けの浜辺で、音楽が鳴る。

「いいね、雰囲気あるね」

3人に声をかけると、
笑顔でテンションが高かった。

この場にいる全員が
“楽しい”雰囲気を共有していた。

ぼくは
ハッとした。

写真をただ撮るだけじゃダメなんだと。

ここにいる子たちは、
とつぜんの依頼にも協力してくれた。

でも楽しいフリじゃなくて、
楽しんでいてくれている。

それは
ここに彼女たちが思い描いた
写真じゃなくて、撮影のイメージが
あったから。

浜辺のロケーション。
夕方のロマンチックな時間。
アドレナリンがでるedm。
ゴッチさんのサングラス。
オリタマさんのトーク。

すべてがかみ合って、
相手が求めているものを最高のエンターテイメント作り出せる。

ぼくは足りなかったものが何か
理解できた気がした。

浜辺は、歓声で沸いている。

海辺にランプが点り、サラッとした風が吹いていた。